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またか……と嫌気がさして振り返れば、引き留めたのはメルシアだった。
……メルシアは、本当に我が儘だった。
『マーサ、この方がアルフェシラ王からいただいたシナモンの入ってるケーキを食べてくださるんですって!』
『………は? ふざけんな、何勝手に』
『うーむ、しかし、メルシア様は極度の甘党で、恐らくケーキもさぞかし甘めに作られているかと。大丈夫ですか?』
『うん大丈夫!』
うーむじゃねえし。
メルシアも何を勝手に答えてんだか。
もちろん人間の思い通りにさせるほど、俺はぬるくもなければ甘くもない。
『そうだわ、一緒にお茶しましょ? それに、あなたの事もっと知りたい。
…………ダメ?』
小首を傾げてそう訊いてくるメルシアは、闇のように深い瞳を潤ませる。
『…………いや……別に』
こうして俺は、大のつくほど甘い物が嫌いであるはずなのに、シナモンの入ったケーキとやらを食べ、メルシアに付き合う事となったのだ。
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