約束

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 それから何度かメルシアの元を訪れたが、俺は自分の事は一切喋らなかったし、メルシアも一切自分の事を語らなかった。  これでいいのかと思いつつも、人間界に訪れるたびに人間の生活に馴染んでいった。  メルシアへの想いも、恋、と言えば照れ臭いが、徐々に芽生えていった。その想いを叶えるためにも、まずメルシアの事を知らなければならないのだが。  俺は前に進む事が出来ないでいた。  そんな時だった。  ヨウが現れたのは。  ヨウは気弱な人間だった。まだ16歳という若さかもしれないが、魔術も使えず、王城の衛兵として雇われた。  しかしヨウは、“特別な存在”でもあった。いいや、特殊と言った方がいいのか。  そんな所に惹かれたのか定かでは無いが、メルシアはヨウと出会って2年で結婚し、レイを産んだ。  あっという間の出来事だった。なぜ俺では無くヨウなのか。この2年の間に2人に何があったのか。俺には解らない。
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