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一匹のカメが聖火リレーを見に行こうと思いリレーコースまでゆっくりと歩いていると、ウサギが手錠でできた五輪のマークがついたTシャツを着て後ろから近づいて来ました。
「よ!カメさん。どこ行くの?」
とウサギはカメに聞きました。
カメは、
「聖火を見に行こうかなぁと思って」
「なら、聖火を見に行くのではなくって抗議しに行こうよ!」
「?」
カメはなんの事だが判らず首を傾げます。
「ニュース見てないの?開催国がさ、人権を踏みにじるような事をしたんだ!」
「へぇ、そうなんだ。初耳だなぁ」
「本当に知らないのかい。まぁいいや。だからみんなでその国に『人権を尊重しろ!!』とか、『事由を奪うな!!』と聖火の周りで訴えるんだ!」
カメはそれを聞いて目を真ん丸にして驚きます。
「リレーの邪魔にならないの?」
「そうなっちゃうね。というか、妨害して困らせてやることが目的でもあるんだ。どう一緒に参加しないか?」
カメは少し考えて、
「うーん、遠慮しておくよ」
ウサギはそれを聞いて
「おい!どうしてだよ!もし、それが自分の人権だったらどうするんだよ!?」
と怒鳴ります。
「うーん、でもね」
かめはまた少し考えて、
「僕の考えなんだけどね……」
「早く言えよ」
「確かに自由や人権をたいせつさを訴えるのは大事だけどね……」
「だから何?」
「果たして自由や人権を訴えてリレーの邪魔をすると……リレーをやろうという人々の自由を奪うってことに……侵害するということにならないのかぁと思って」
「…………」
「だから、僕はそういうのは遠慮しようと思って……あっ!でも、ウサギ君を止めようとは思わないから。やろうとすることは自由なんだからね。……でもね、ウサギ君。これだけは言うね。……本当の自由はさぁ……お互いに相手の事を思いやってこそ……成立するものなんだと思うんだよね。……お互いの事を考えていない自由は……逆に余計に不自由なものになってしまうと思うんだ」
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