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「昨日、ヒメのために夜遅くまで作ったんだよ。ヒメ、うさぎが好きだったでしょ?」 何も喋らないヒメを相手に私は喋り続けた。 「桜がもうすぐ咲くよ。 ヒメは春が一番好きって言ってたよね。 3月3日はヒメの誕生日だし、クラス替えが楽しみだし。 春風が心地良いよね。 って言ってたじゃん。 目を覚ましてよ。 ヒメ…。」 手を握った。 暖かい手だった。 「…あ…お……い」 え…? 誰かあおいって言った? 「…ご…めん」 え…? この声は… 「ヒメ!?」 「姫乃!?」 私とヒメのお母さんは、驚いた。 「大丈夫!?」 2人揃って同じことを聞いた。 「……ご…め…ん…」 酸素マスクの下で口が動いている。 その小さな声を耳をすませて聞いた。 「…あ…お…い…ごめ…ん。」 「何で謝るの?」 「刺した…か…ら…。大…丈…夫…だっ…た…?」 ヒメはこの前私の腹部を刺したことを謝っていた。
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