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ってくれ……風雨をしのげれば良いから」
「風雨? にいさん何時から旅人になったの?」
「今からだ」
「いや、断言されても……まあ、とにかく、他に使える部屋はないらしいから、諦めて」
「使えない?」
「うん」
「なんで?」
「ほとんど手入れしてなかったから、ボロボロなんだって」
リクトはボロボロでも構わなかった。現在住んでいるアパートなど、倒壊寸前の廃屋であるから屋根さえあれば上々である。
だが、客人をボロボロの部屋に泊めさせるのはホストとして心苦しいだろう。
観念するしかない。リクトは黙ってドアノブを回した。
部屋はそれなりに整えられていた。幸いベッドは二つある。木製の窓からは、生い茂る白い木々が見えた。
天気がよければ近くにある山々も見渡せるだろう。残念ながら空は暗く淀んでいて、絶景とは言い難い。
古い型の電話が、ベッドの間の床に無造作に置かれていた。
外装と内装から考えて、ここは元々ホテルであったらしい。電話はその時の名残であろう。リクトは受話器を持ち上げて耳にあてた。
何も聞こえない。壊れているのだろうか?
りるは部屋に入るなりベッドに倒れこんで寝息をたてた。リクトは呆れた。仕方なく自分のベッドからシーツをひっぱがしてりるにかぶせる。
歩き疲れているだろうから、少しは休ませてやろう。
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