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屋敷で発見された白骨死体は誰なのか? 何故、建築士を発見できないのか?
奇天屋敷の謎に神威白土が挑む。
「もしかして、屋敷の中には誰もいなかったとか?」
高校生ぐらいに見える少女、すぴーるが、おずおずと手を挙げながら言った。
「いや、さすがにそれはアンフェアでしょう」
リクトは苦笑いしながら答えた。いくらなんでも誰もいなかったでは卑怯すぎる。
話しの中心は、あくまで何故屋敷に入った建築士を見つけられないのかだ。
「では、屋敷になにかしらの仕掛けが?」
大学生風の少年、ログンは目を輝かせてリクトに聞いた。
「そんな所です。それが、奇妙な屋敷を建てた理由につながっていて、実は……」
「ちょっと待った」
リクトの言葉を遮ったのは青年実業家風の男性。オフ会の主催者、ヤシンジだ。
「ミステリなんだから、作者がネタばれしちゃ、もともこもないだろ?」
もっともな意見だと一同は思った。
頃合いを見計らって、初老の男性が料理を運んできた。執事の斎藤である。
料理に舌鼓をうちながら、会話が続く。
「すごいですよね。ヤシンジさんは。こんなおっきな別荘もってるなんて」とすぴーる。
「いや、意外に安かったんだよ。食事中になんだけど、殺人事件があったからね」
事件についてはヤシンジから伝えられているようだ。誰一人として、不快そうな態度をとる者はいない。
「おあつらえむきですね。亡くなった方には申し訳ないけれど」
遠慮がちにウィルが言った。リクト以外のメンバーが神妙に頷く。
「そうでしょう」ヤシンジが口元を綻ばせた。
「未解決事件捜査委員会のオフ会にはうってつけですね」と、ログン。
「捜査委員会?」
リクトの声がうわずった。りるからは何も聞かされていない。
「聞いてないの?」
139号がナイフとフォークを動かしながら言った。
「聞いていません」
リクトはりるを睨んだが、カエルのつらに水、りるは意地悪な微笑を見せている。
リクトは自分の迂濶を呪う。リクト自身は自分の推理力に懐疑的なのだ。
だから、なるべく事件に関わりたくない。
「まさか、ここで起こった殺人事件を?」
「ええ、捜査しますよ」
「しかしあれは、同室にいた人が犯人でしょう」
「そうでもないんですよ」
すぴーるが何やらごそごそと、A4用紙をとりだした。
「これ、伯母にお願いして捜査資料をちょっと拝借して貰ったものです」
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