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「捜査資料より、君の伯母さんに興味が湧いてきたよ」と、ウィルが口端を引き上げて言う。
リクトも同感だった。
姪に捜査資料を流す伯母の性格がきにかかる。
「それはノーコメントで。ばれるとヤバイですから。えっと、資料によると、容疑者は睡眠薬を服用しているんですけれど、容疑者自身は飲んだ覚えはないと主張しています」
「まあ、誰かが見ていたわけでなし、なんとでも言える」
「はい、ログンさんのいうとおりです。でも、この場合、問題点は誰かに薬を盛られた可能性だと思います」すぴーるの大きな瞳に理知的な灯火がともる。
「それはつまり、鍵を持っていた人物と鍵を開けられる人物も怪しいってこと?」
139号が顎に手をあて、思案しながら言った。
「そうです」
「切りがなくなりますね」
リクトの発言は本人の予想以上の効果をあげる。
「確かに。条件が曖昧で結論を出せないね。今日はこのぐらいにして、明日議論しなおそう」
ヤシンジの一声で、晩餐は終了した。
「なんか消化不良」
部屋に戻ったりるはベッドに腰かけ、リクトに向かって、ちらりと舌を見せた。
「そうだな」
リクトはそつなく無視する。
「え!」
頓狂な声をあげ、りるはリクトをじっと見つめる。
「なんだ?」
「にいさんが、こうゆう事件に興味をもつの、珍しいなーって」
リクトは肩を竦めた。りるの言うとおり、リクトはこういった事件が好きでわない。
そう、いわゆる密室殺人は。
「で? どうして興味を持ったの?」
りるはベッドの上でうつ伏せになり、両手で顔を包むようにして頭を支えた。
長い黒髪がさらりとゆれ、少しばかりリクトを動揺させる。
「ネタになりそうなんでな」
「裁判中だよ? 作品にするのは不味いんじゃない?」
「分からないように書くさ」
リクトはベッドに横たわった。
「先にシャワー浴びちゃって良い?」
「ああ、僕は少し眠るよ」
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