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すでに集まっていたログン、すぴーる、ウィルは、ちらりと二人を見たものの、すぐに視線を部屋に戻した。みんな部屋には入らず、ドアの前に立っている。
リクトも皆に習って部屋を覗きこむ。
二つあるベッドのうち、左側のほうにヤシンジがぎょうがしていた。胸にナイフが突き刺さっており、あふれだした鮮血がベッドを赤く染めている。
そのヤシンジの隣に、黙然と斎藤が立っていた。斎藤は白い布をヤシンジの顔にふわりとかける。
「で、誰が殺したんです?」
リクトが言った。
「それが……言いにくいのですが……」ウィルは当惑していた。
「密室殺人なんです」
「……ああ、なるほど。鍵がかかっていたんですね」
「そうよ」139号が面倒くさそうに応じる。
「鍵ぐらい、コツを知っていれば開けられますよね」
「そうね」
「では、密室殺人とは言えないのでわ?」
「そうかもね」
口調は素っ気ないが、気分を害した風でもなく、139号は淡々としていた。
ウィルは眉間に皴をよせているものの、精神的なぐらつきはないようだ。
すぴーるは口に手を当てていたが、目は冷静さを失っていない。
ログンにいたっては好奇心をむき出しにして、部屋を観察している。
さすがは未解決事件捜査委員会である。
誰一人として取り乱す気配すらみせない。リクトも動揺していなかった。死体など見慣れているのだ。
誰が言いだしたわけでもないのに、全員が一階のダイニングに集まっていた。
つづきになっているリビングのソファーに座るものもいたが、そこまで正確さを求める必要はないだろう。
「帰りましょう」リクトはきっぱりと言った。
視線がリクトに集まる。
「危険があるかもしれません。夜道ですけれど、なんとかなるでしょう」
「あのね、にいさん」
りるがため息まじりに言った。
「ちょっと外を見てくれる?」
逆らいがたいものを感じて、リクトは椅子から腰を上げ、窓のカーテンを払いのける。
白い。
無音の暗闇を、白が染め上げていた。
間断なく、親の仇と言わんばかりに物凄い勢いで吹きすさぶ雪は朝まで止みそうもない。
体力に自信があるリクトでも、さすがにこの状況では車までたどり着けないだろう。
「……えっと、じゃあ、とりあえず警察に連絡を……」
今度ははっきりとりるがため息をつく。
「こんな山奥に、電話線がきてると思う?」
「でも、電気がきてるじゃないか」
リクトはなんとなく、自身の敗北を悟る。
「電気は地下にある発電機で供給しています」
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