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「とりあえず、アリバイでも確認してみる? 私はウィルとチェスをしていたけど」
139号は、すらりと立ち上がり肩を竦めてみせた。
こわく的な悪戯っぽい笑みを浮かべていたが、その笑みにはやや陰りが見える。
「僕はすぴーるさんといっしょにいました」
足元をふらつかせたすぴーるに、寄り添いながらログンが言う。
「私達はダイニングにいましたよ」
りるはリクトの手を強く握りながら言った。
「では、三組のうち、一組が犯人ですね」
リクトは冷然と言ってのけた。
値踏みするような目つきで一同を見回す。
二人目ともなると、リクトを除いて皆、平静を崩しかけているようだ。
139号とりるはさほどでもないが、すぴーる、ウィル、ログンは疑わしそうな、若干怯えを含んだ視線を隠しきれない。
「さっきの悲鳴は誰が?」
リクトが感情を交えず、誰にともなしに聞く。
すぴーるが弱々しく片手を挙げた。
「私です。私の部屋にちょっと荷物を取りに行こうとしたら、この部屋のドアが少し開いていて……」
「気になったので僕がドアを開けたら、こんな状態でした」
ログンは自分自身を落ち着かせるように低い声音で言った。
「やはり、一ヶ所に……」
「いえ、それはやめておきましょう」
ウィルの提案をログンが無下に退けた。
「もし、犯人がいるとすれば、二人いることになります。ならお互い、信用できる人といっしょにいるのが得策では?」
三組の内、誰か一人が犯人だとしても、当然もう一人は共犯者だ。
ログンは口には出さなかったが、もう一つの可能性に気づいていた。
犯人はすぴーると自身を除いたメンバー全員かもしれない。
その場合、三組で固まるのはむしろ危険だ。すぴーるも共犯者かもしれないが、あえて否定した。
信じれば奪われ、信じなければ失う。
ログンは失うより、奪われるほうが楽なのだ。
ウィルもログンの提案をうけて、頭を回転させた。
否定する材料は何処にもない。
もしかしたら、もう一人館に誰かいるのかもしれないが、それならば集まっていようとばらけていようと、あまり関係ないように思えた。
すぴーるは怯える自我から思考力を切り放して、状況を分析する。
殺されたのはヤシンジと斎藤。
犯人はこの二人に恨みがあったのでわないだろうか?
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