紙片の間

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ここまでうまくいくとは思ってもみなかった。 うまい具合に不信感が渦巻いている。リクトと名乗ったあの探偵が現れたのは計算外だったが、蓋を開けてみればこの結果だ。 彼の名声は有名無実であったらしい。それにしてもりるは美しい。 あれほど美しい女性を自分の手で殺せる日がくるとは。 殺人者は全身を震わせた。ふしだらで穢れた欲望が湿った眼球にちらつく。 人は誰でも欲望を抱いている。殺人者は欲望を抱くだけでは飽き足らず、外部に暴発させたのだ。 行き着く先が監獄だと知りながら、もう、殺人者は止まらない。 カチリ、ごく静かな金属音が静かな部屋に響いた。 殺人者は静かに部屋に侵入して、ほくそ笑む。監視カメラで二人が眠っているのを確認していたが、実際に眠っている姿を見て暗い喜びがふつふつと沸き上がってきたのだ。 殺人者はそろりそろり、りるのベッドに近寄った。 まだ、あどけなさの残る面差し、透けるような黒髪、行儀よく閉じられた小さな唇からそこはかとなく色香が漂う。 殺人者は手を伸ばしかけてはっとした。 まだメインディッシュには早すぎる。まずはリクトを仕留めてからだ。 仕留めるといっても殺すつもりはない。少しの間深く眠ってもらうだけだ。 殺人者はリクトのベッドの前に立ち、睡眠薬を染み込ませた布を構えた。 そして……何の前ぶれもなく、頭に激痛が走りその場に崩れおれた。
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