レポート2

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ちょっとした広場に車を停めて、歩き初めてから約45分。 りるは息をきらせ、苦しそうに緩やかな坂道を登っていた。 一方、彼は普段車を利用しないので、散歩にもならず、余裕綽々である。 女と男。何故そんな違いがあるのだろう。太古の昔に練られた知恵だろうか? あるいは罠かもしれない。 「りる、あとどれくらいかかる?」 りるは怨めしそうに彼を見た。 「多分……30分くらい」 「おぶってやろうか?」 彼は真剣に言った。おそらく、おぶっていったほうが早い。 りるは怨念のこもった視線で彼を睨み、首を左右にふる。 「何か怖い」 「信用ないな」 道は針葉樹に囲まれていた。冷たい風が尖った葉を撫でるたびに、金属がきしむような、耳障りな音が響く。 「りる、あれか?」 雪化粧を施された木々の合間から、赤い屋根の建築物が見えた。 「うん。ああ、でもオフ会に参加するの初めてだからわかんないかも」 「そういえば、主催者から変わった手紙受け取ったんだろ?」 りるは頷き、コートのポケットから紙片をとりだして彼に突き付けた。 『6・8。12・9。12・16。12・4。18・14。18・16。』 「なんだこれは?」 「暗号らしいよ?」 彼はとりあえず数字にしたがって、五十音やアルファベットに置き換えてみた。 しかし、どうも上手くいかない。アナグラムだろうか? 「えっと、ヒントは難しく考えるな、だって」 「うーん」 では並べ替えではないのだろう。しばらく考えてみてもなにも思いつかなかった。 「まあ、後でのんびり考えるか」 彼は紙片をポケットにしまい。りるに合わせてゆっくり山道を登った。 彼は建物のでかさに圧倒され、ついで高い天井に感嘆の息をもらした。なんと、シャンデリアまでぶら下がっている。 エントランスホールとでも言えばいいのか、異様に広いスペースとられている。 少し先にはホテルにあるような、フロントがあり、その隣には一昔前のハリウッド女優でも下りてきそうな大きな階段がしつらえられていた。 「なにぼーとっしてるの。君、しっかりしなさい」 肩をポンポン叩かれて、彼はやっと正気を取り戻した。 「えっと、貴女は?」 隣で呆れてため息を吐いたりるを無視して、彼は目の前に立つ女性に聞いた。 「私? 私は139号。
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