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リクトはコアなファンも少ない、崖っ淵作家であるから、収入はジャンガリアンハムスターの涙ていどである。
しかし、なんとしてでもリクトは作家と名乗りたいのだ。
「本業が稼げる仕事だと誰が決めた?」
「探偵のほうが格好良いのに」
りるは唇を尖らせて文句を言った。
「とにかく、作家で通すぞ」
リクトは更に念を押して会話を打ち切った。
「部屋は二階だな。荷物を置きに行こう」
あらゆる意味で冗談じみた階段を上り、言われた通り進むと幾つか扉が並んでいた。
全ての扉に金属製のプレートがかけらており、部屋番号が割り振られていた。
203号室の鍵穴に鍵をさしこんで開鍵する。
「一つ聞いて良いか?」
リクトは重大な事に気づいた。
「なあに?」
「部屋は別々だよな?」
「そんなわけないでしょ」
りるの自信に溢れた言葉を聞いて、リクトは少し考えてみた。
しかし、何故そんなわけないのか分からない。
「何故だ?」
りるはニッコリと微笑む。
「だって兄さんなんだから、わざわざ部屋を二つ用意してもらわなくても良いじゃない」
リクトは、また少し考えてみた。
確かにりるは自分をにいさんと呼ぶ。はたから見れば兄妹だと思うだろう。
「頼むから、部屋をもう一つ用意してもら
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