ある盲目の話

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ある盲目の話

 ―渡辺―    暗く何も見えない。未来のことすら見えないというのに、目先のことまで見えないとはどうしたものか。  つい一時間前までは見えていた、そう考えると悲しさよりも、虚しさを覚える。きっと見えるようになるのだろう、そう思っていた。だが願望は結局願望に過ぎなかった。もうこの眼が光を認識することは、ない。見えているのに見えないのだ。 「ひどすぎるだろ」  自分を落ち着かせるかのように呟く。そして耳は正常な働きをしたことに少なからず安堵を覚えた。
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