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赤薔薇のアリス
あれは、高校一年のときのことだと思う。
「恋がしたい」
学校の昼休み。
彼女はいきなり僕にそう告げたのだった。
「何さ…いきなり」
「恋がしたいの」
真っ直ぐに言ってくるものだから、ちょっとした悪戯心で、冗談を言ってみる。
「僕と?」
「んなわきゃない」
隙無くそう返され、かなりツボに嵌る。
一通り笑い終えた後、僕もそれに返答した。
「だろうね。んなことになったらきしょいわな…で?」
本題をさっさと言うように促してみた。
「何」
彼女は、僕が何を聞いたのかわからなかったらしい。
意図や主語は文脈で掴んでほしいなあ…
「なしていきなりそんなこと言ったのさ?」
彼女の答えは実~にシンプルトン。
「彼氏と別れたから」
たったそれだけの理由。
しかし、付き合うというものは本気で好き合ってこそ。
そんな簡単に次へ行けるのか…
「切り替え早うおますなあ」
半分、感心の念を込めていってやる。
もう半分?
嫌みに決まってる。
「恋の痛手は、恋で塗りつぶすのが一番なのよ」
グッと拳を握り込んで力説する彼女は、どこか女の子らしくて微笑ましい。
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