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一時も離れたく無いから…そう思って、人一倍努力してこの高校に入学して。
毎日憎まれ口を叩き…それでも楽しく二人で学校に通って。
帰り道、毎日の様に寄り道しては暗くなるまで遊んで。
家に入る前にはいつも「おやすみ」って言ってキスをしてくれて。
…でも、もうそんな甘い生活は望めなくなる。
オレは高校生、湊は大学生。
その差が、大きい気がして。
「悲しいのか?俺が、居なくなって」
「……全然」
「言うと思った」
オレの気持ちなんか知らない湊はケラケラ笑って、教室なのにも関わらず胸ポケットから取り出した煙草を口にくわえた。
かちり、と火をつける音が、耳に届く。
オレは俯いたまま、その音を聞いていた。
教室に流れる静寂。
時々、湊が煙を吐き出す音以外、何の音も響かないこの空間は、何だか居心地が悪い。
「…早かった、な」
ぽつり、と。
寂しげな声音で、湊が言葉を紡いだ。
顔を上げれば、声とは正反対の眩しい位の笑顔がオレを見下ろしていた。
「お前、必死だったもんな。俺と同じ学校行くって、さ」
「…湊いない学校生活とか、つまらなかっただろうし」
「ははっ、まぁ俺が居れば退屈にはさせねぇからな」
「自意識過剰かよ」
「……でも、嬉しかったんだぜ?」
そう言って笑う湊は、本当に嬉しそうで。
やめろ、
そんな風に、笑うな
「だから、新…俺と、」
「湊、」
もう、これ以上、
「別れ、よう」
好きになんか、なりたくないんだ。
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