55人が本棚に入れています
本棚に追加
しん、と静まり返る教室。
相変わらず、外からは楽しそうな談笑が聞こえてくる。
「……別れて、やる」
不意に。
重い溜め息と共に吐き出された、言葉。
胸が、ずきんと痛んだ。
これで、終わる。
長い間想い続けたこの気持ちにも。
楽しかった、この想い出も。
今日で、最後。
そう思うと、心にぽっかり穴が空いたかの様で。
ぐっ、と拳を握り締めて、
唇を強く、噛み締めた。
「…ただし」
「…、え……っわ?!」
刹那。
ぐるん、と視界が回転して。
目の前には、怒りと哀しさを宿した冷酷な、湊の顔。
机に組み敷かれている、と気付いたのはそのすぐ直後。
「…っな…」
「俺の目を見て、“湊なんか嫌いだ”と…そう、言え」
「…!?」
「“顔も見たくない位大嫌いだ”と…“だから別れてくれ”……そう言えたなら、別れてやるよ」
「…、んなの…っ」
言える訳が、無いじゃないか。
くしゃり、とオレの表情が歪んだのを確認した湊は、短い溜息をついた後、
オレの脳天に、拳を振り落とした。
痛みから声も出せずにもがいていると、
今度は、ふわりと。
長く優しいその腕で、オレの身体を包んだ。
「…嫌いになったんじゃないなら、別れるだなんて言うんじゃねぇよ」
「……みな、と」
「いいか、新…俺は、遊びなんかで男と付き合うなんざ有り得ねぇ。ましてや…こんな自分勝手で我が儘なガキなんて、特に、な」
「………、でも」
「でも、もクソもねぇ!この先だって、テメェが俺から逃げようものならいくらでも追い掛けて、捕まえてやる」
「…湊」
「離してなんかやらねぇよ…愛してる、新」
甘い言葉を耳元で囁かれ。
オレは、とうとう我慢出来ずに、大粒の涙を頬に落とした。
「っ、れも…オレ、も…っ、離れ、たくねぇ…っ!」
「…なら離れなきゃ良い。ずっと側にいろ」
「、んぅ」
ふわりと笑った湊はオレの唇にキスをして、また愛してると呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!