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「なぁ、新」
「ん?」
窓際の壁に腰を下ろす湊は、その足の間に座り込んだオレの身体を抱きしめながら、オレに声を掛けてきた。
泣きすぎて開ける事も辛くなった瞼を無理矢理開き、顔だけを湊に向ければ、甘い笑顔を浮かべた湊がオレの唇に掠める様なキスを送って、抱きしめる力を強め、言葉を口にする。
「一緒に、住もう」
「………、は…?」
「俺が借りてるアパートに、一緒に住もう」
あまりの突然な発言に、オレは目を見開いて固まった。
湊は優しく微笑んで、オレにまたキスをする。
オレが、湊と、一緒に住む?
「…実は、お前の親御さんには相談済みで、許可ももらってるんだ」
「……信じ、られない」
「…勝手に話を進めて、悪かったとは思ってる。でも…」
「そうじゃ、なくて」
罰が悪そうに視線を逸らす湊の言葉を遮って。
再度頬を伝う涙にすら気付かずに、
「…オレ、一緒に…いられる、のか?」
オレの言葉に驚いたのか、一瞬目を見開いた湊だったがすぐに幸せそうに目を細めて。
オレの目尻にキスをして、涙を吸い取っていく。
「あぁ、ずっと一緒だ」
「いただきます、も…ごちそうさま、も…?」
「一緒に夕飯作って、一緒に食べよう」
「いってきます、も…ただいま、も?」
「朝は二人で学校行こう。帰りも待ち合わせて、今まで通り寄り道してから帰るか?」
「…っ、おはよう、も…おやすみ、も……?」
「二人で寄り添って寝よう。朝も、一緒に起きて…二人で、挨拶しような?」
止まらない涙を流すオレを、優しく、それでも強く、抱きしめる湊。
「ずっと、一緒にいよう」
キスと一緒に紡がれた言葉が嬉しくて、
「…大好き、湊」
そう、返せば。
甘い微笑みと甘いキス、
二度と離さない、と強い意志を込めた手を絡めて、
二人で、笑い合った。
オレ達の恋は、
切なく甘い恋の花は、
散らなかった。
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