息づかい

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息づかい

ガチャン  自販機から水を取り出して、俺はまた走り始める。  ランニングを始めたのは最近だ。  本来はもっと早い時間に走っているのだが、今夜はちょっとした好奇心から夜中に走っている。  ケータイを開いて時間を確認すると、すでに2時をまわっていた。 (明日も学校なんだよな・・・)  そんなことを考えていると、不意に耳に風を感じた。 「気のせい……だよな。まぁ、走ってるんだし、風くらい感じるか」  自分に言い聞かせるように口に出してみたものの、余計に不安が募っていった。 「……ハァハァ……」  聞こえてくるのは自分の息づかいだけ、他のものは全て静寂に包まれているはずなのに、風だけはいやに耳にまとわりつく。  虫の予感、というのだろうか。  俺は背筋に冷たいものを感じた。  ヒンヤリとした何かが、今にも俺の心臓を止める……そんな感覚が俺の中を満たしていくのだ。
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