序章 肝試し

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************ 「相木さんも、勿論参加しますわよね?」 ・・・なんのことか、まったくわからなかった。 人に話しかけるときは、ちゃんとその人に分かり易く話すべきだと思う。 「・・・なんのことかわからないんだけど?」 そう答えると、挑発するような答えが返ってくる。 「あら、友達のいらっしゃらない相木さんは、人の話も聞いてませんのね。さっきみんなで話していた肝試しですわ。」 みんなで話していたとは随分な言い草だ。自分たちが勝手にホームルーム中におしゃべりをしていただけではないか。 それにそれが、私に友達のいないこととなんの関係があるというのだ。 しかしそんなことは顔に出さず、答える。 「・・・悪いけど、興味ないから。」 正直な気持ちをそのまま答える。別にこの人との人間関係なんておべっか使うほどの仲でもないし、遠慮なんか必要なかった。 クラスのボス猿としては、こんな言葉を投げかけ慣れていないのだろう。頬をピクピクさせながらも、さも予想していました、という顔を作って話を続ける。 「あら、怖い。まあ・・・ペアを組んでくれるような友達もいない相木さんは、怖くてこんな遊び・・・、受けられなくて当然ですわよね。」 その言い方にカチンと来た。私は友達なんていなくてもいいと思っているが、いないことで何かができないと言われるのは、たまらなく嫌だった。 「・・・別に一人でも、肝試しなんて怖くないわ。」 今度はその言葉に、端山美智穂がニヤリと表情を変える。 「なら相木さんも参加ということでいいわね?」 しまった、と思ったときはすでに遅かった。 ************
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