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二階堂はそこのくまの人形を触りながら答えた。
「おそらく、千早さんのお母さん…校倉紅葉さんの部屋だったんでしょう。」
校倉紅葉……?
私はここへ来たとき、神永が言っていたことを思い出していた。
西村が解いた、校倉家婦人殺人事件……
「彼女は…確か殺されたはずだろ?確か…専属の執事に……」
「はい、千早さんはきっと、紅葉さんが殺された後からこの部屋からあちらに移ったのです。
ここは子供用の部屋みたいですし、大人になった彼女にとっては窮屈だったのでしょう。
……それに……」
二階堂が言いたげなことがなんとなくわかった。
突然いなくなった母親
残ったものは遺産と部屋
部屋の中にある、微かな面影を、彼女は欲しがったのだろう。
私は、その部屋の中を振り返っていた。
母親が使っていた
大事な部屋
ベッドも、棚も、カーテンも
何も変えずに、面影を残していることだろう…
「………ん?」
私はその時、あることに気がついた。
「ベッドも…棚も…カーテンも……彼女は母親の面影を残すために、変えていないんだろう……
………だったら……!」
私は二階堂の顔を見た。
彼は相変わらず楽しげな顔をして、くまから手を離した。
「…そう、千早さんは、母親の面影を部屋に残すため、ベッド、棚、カーテン…その他にも、
そこにある雑貨や置物だって、そのままにしてあるはずです。」
「つまり、犯人がタンスの中に灰皿があることを知ってたのは……」
私は思い切り叫ぼうとしたが、二階堂がそれを遮った。
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