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「……さすがだね……二階堂君…」
西村が静かにやっと
顔を上げて言った。
先程までは、あんなに態度が豹変していたのに
うってかわって表情は穏やかだ。
言葉からして
完全に罪は認めているようだが……
「……犯人が千早さんだってわかったときに……俺は千早さんの様子を見張っておくと言いながら、彼女に推理を聞かせようと部屋に行った……」
西村は少しだけ歩きながら、壁の方に近づいていった。
壁の目の前に立つと、ゆっくりもたれ掛かり、話の続きをし始める。
「俺が話終えると、彼女の態度からして、どう考えても犯人だった…。……でも、あの女はそれを否定した。」
事件のことを思い出すようにギリッと歯をたてると、体が僅かに震えだした。
「……あの人は…私が犯人なんて誰も信じない…、君が私を冤罪の犠牲にしようとしたとも…なんでも言える……。…君が私に与えた手紙は完全な脅迫だ…訴えたらどうなるだろう……と………」
西村は片手を両目にあてた。
悔しそうな、苛立ってそうな声は、今までの透き通った声とは別人のようだった。
「…俺は…、自分のやり方をあの人に否定された…それだけでなく、それで俺の今までの実績を崩そうとした……。
させてたまるかと…思って……気がついたら……」
彼はガクッと膝をつき、まだ震えは止まりそうになかった。
今までそうやって謎を解いてきた方法、千早はそれが脅迫だと言った。
やり方を否定され、壊されかけた。
それだけだけど、思わず手が出てしまったのは、
西村はかなりのプライドの持ち主だったんだろう。
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