第1章 土曜日に会いましょう

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東京郊外にある紅茶ササロン《アールグレイ》は、地元の主婦たちだけではなく、OLや学生たちの口コミから広がった人気の店で、午後のティータイムもずっと満席状態が続いている。 ティーサロンはもちろん、茶葉やティーポットなどの雑貨類も購入出来る。 白い壁に木製のテーブルと椅子。 こじんまりとした店内は1階と2階に客席があって、雑貨などの販売は1階の入口付近に並んでいる。ソファ席もあり、春から秋にかけては通りに面してオープンテラスもできる。 今は、夏の終わり。夏の名残りの暑さが残る九月。 オープンテラスは、まだ満席状態。 秋になるというのに、まだまだジワリと汗が滲む暑い日々が続いている。 * 野原香澄(のはらかすみ)は紅茶をいれながら、壁時計を見あげた。 今日、4時に友達が店に来ることになっている。土曜なので、OLをしている友達は休みだ。 本音を言うと、実は気持ちが乗らない。何故なら、今、一番会いたくない人物だから。 短く切った髪も肩まで伸びたけれど、傷ついた心までは、未だに癒されてはいなかった……。
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