第六和:罪の意識と本当の気持ち

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「信頼……?」  蒼の言葉に、京次郎は首を傾げる。 「塚紗様は、疾風の事は兎も角、山賊の事はあまり他言致しません。しても自分の事だとは言いません」  京次郎は悠助と初めて会った日、路地裏での塚紗と悠助の会話を思い出した。そうか、だからあの時……。と、心の中で呟く。 「山賊の行く末は、お聞きになられましたか?」 「へ? あ、いや。塚紗がその山賊を抜けたってくらいしか知らないな」 「……そうですか」  蒼は一度俯くと桂へと視線を向け少し体をずらすと、 「塚紗様がここに残るおつもりなら、私も残らせて頂きたい。“京次郎殿のお父上”に、お頼み申します」  と、三つ指を立てて頭を下げた。 「ああ、なら、改めて自己紹介をしよう。私は“木戸孝允”だ。よろしくね、蒼君」 「ありがとうございます」  好きなだけ居ると良いよ。桂はそう満足気に微笑んだ。そして丁度その時、 「お、暴れなかったか蒼」  開けた状態の障子から塚紗がひょこりと頭を覗かせた。 それに続いて柚禾も顔を出す。 「暴れるって……塚紗様が私の刀を持っていってしまわれたのではないですか」  おぅそうだった。塚紗は手に持っていた蒼の刀を返すと、全員の顔を見渡す。 「ま、なんとかなったみたいだな」  まるでそうなると分かっていたように塚紗はニッコリと笑った。 が、すぐにまじめな表情を蒼に向ける。 「余計なこと、話してねぇよな」 「はて、余計なこととは?」  とぼける蒼を一瞥し、塚紗はため息を一つつき、 「ちょっと顔貸せ」  それだけ言った塚紗は、また部屋を出ていってしまい、蒼も三人に一礼した後に塚紗を追って部屋を後にした。 .
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