第六和:罪の意識と本当の気持ち

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「あれ、蒼さん? 塚紗は?」  蒼だけ居間に戻ってきたことに、京次郎は首を傾げる。 蒼は落ち着いた笑みを浮かべると、 「どうか、“蒼”とお呼びください。塚紗様はそのままお出かけになられました」 と返した。 そして先ほどまで自分が座っていた座布団の上に再び腰を下ろす。 「出かけた? 何処に?」 「多分、今頃警察署にいますよ」 「警察署……? なんでまた……。あの、斉藤って人の所か?」  京次郎の言葉に、斉藤さんの事まで……。と心の中で呟いた蒼は苦笑を浮かべた。 「私に塚紗様の居場所を教えたのは彼ですからね、今頃は青筋くらいは立ててるんじゃないですか?」  所変わって警察署。 「面会? 誰だ」 「はっ。……匿名希望、と言われただけで他には何も……」  先日蒼が訪れた時とはうって変わったように綺麗に片づけられた部屋で、数枚の紙束を手にしていた斉藤が突然の警官の報告に眉を潜めた。 「匿名希望? 特徴は」 「はっ。着物を纏い腰には刀を携えておりました。身元引受人があの木戸殿との事なのでそのままです」  警官から言われたその訪問者の特徴に斉藤は、ああ。と小さくこぼすと、資料を手にしたまま腰を上げた。 「報告ご苦労。下がれ」 「はっ」  警官が一礼して部屋から去ると、斉藤は再び資料へと目を落とす。そしてお手上げと言ったような、諦めたような笑みを浮かべ肩を竦めた。 「さぁて、どんな形相で待ってる事やら……」 .
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