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「で、なんで俺ん家……?」
木戸邸の居間にて、座卓に肘を突きながら不機嫌そうに京次郎が言った。
その座卓の周りには桂と悠助を除いた木戸邸の住人、すなわち塚紗と朝吉夜吉に斉藤。そしてその隣にはあの大和撫子が礼儀正しく座っていた。
「いや、だってここの方が人集まるし」
な? と白い歯を出して人当たりよく笑って見せる斉藤に京次郎はため息を一つ。
「んで、今度は何の使いっぱしりに使うつもりだ斉藤」
明らかに不機嫌な塚紗の言葉に斉藤は動じることなく、そうそう、と話を切り出した。
「まずこの方を紹介しよう」
そう自分の隣に座る大和撫子をちらりと見やる。
「この方はとある豪族の末娘、十六夜様。数日前その屋敷にある一通の文が届いた」
斉藤がそこまで言うと、大和撫子基十六夜は懐から綺麗に折り畳まれた紙を無駄のない動きで差し出すように座卓の上においた。
それを塚紗が受け取りざっと読む。
「……」
そしてそれを、隣に座る京次郎に渡した。
そして京次郎も塚紗と同じようにざっと目を通す。
「……えー、と……?」
そこには“お前は俺のもの”や“もうすぐ迎えにいく”等の言葉が綴られていた。
反応に困る京次郎の心境を察した斉藤が事の詳細を話し出す。
「その日からずっと同じような文が続いてる。異国の言葉で言うストーカーってやつね」
「で、そいつを捕まえろと」
そう言うこと。塚紗の言葉に斉藤は笑顔で答えた。しかし、話はそれだけではなかった。
「それと、この文の差出人も一緒に探し出して欲しいのです」
十六夜はそう言うと先ほどのとは別の文を懐からだした。そして同じように座卓に置くと、それをまた塚紗が先に読む。そして十六夜を見ると、
「恋、文?」
塚紗の言葉に、十六夜はコクリと頷いた。
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