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「なぁ、宛はあんのか?」
構わず町中を進む塚紗に、京次郎が問いた。しかし、
「まぁ、確信はないけど一件だけな」
お前の方が断然親しい奴だぞ? 塚紗の言葉に、京次郎は首を傾げる。
「ああそうだ。犯人見つけても手出しすんなよ二人とも、何があってもな」
「え……」
何でっすか? そう夜吉が問い返すが、何でも、と、塚紗はそれしか答えなかった。
「ここっ……!」
京次郎たちの目の前にはある程度大きな屋敷が建っていた。
京次郎はこの屋敷を知っているらしく驚いたように声を上げる。
「何でお前が……!」
知ってるんだ、と京次郎が言おうとした時、がたん、と戸が開く音が響く。そしてそこから出てきたのは、
「あれ、みんなどうしたの?」
柚禾だった。
得意気にニヤリと口元をあげた塚紗は一枚の紙切れを京次郎に見せる。そこにはここまでの道のりが簡単に書かれていた。
「こないだ、柚禾に聞いた」
何時の間に……。そう、頬をひきつらせる京次郎を無視し、塚紗は懐から先ほど十六夜から借りたストーカーからの文を取り出すと柚禾に差し出した。
「突然で悪いんだが、この文の差出人を感じ取れたり出来ないか?」
え? 突然の要求に一瞬呆けた柚禾。しかしすぐに正気に戻ると塚紗の手に握られている文に手を伸ばした。
「うーん……。誰が書いたかとか、今何処にいるかまでは僕ではなんとも……」
柚禾の言葉に塚紗は、そうか。と残念そうに呟やく。しかし、
「でも、これを何処で書いたかは多分分かると思います」
柚禾のその言葉に、塚紗たちは希望の光を見いだした。
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