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その後の斉藤率いる警察の動きは早かった。吉郎は取り押さえられその父親は息子の自供で即刻逮捕。十六夜の安全は確実となった。そしてあの時十六夜を庇って意識を失った朝吉はと言うと……。
「お前も相当しぶといよな」
「何せ鉄の筒をもろに受けて数針で済んだんすからねぇ。医者も驚いてやしたぜ」
朝吉が意識を取り戻したのはこの一件からまる一日後だった。病院にすぐ運ばれた朝吉は、出血が多かったものの何針か縫う程度に収まり、医者曰くちょうど当たりどころが良かったらしい。
京次郎と夜吉にそう言われた朝吉はただ苦笑するしかなかった。
「ったく、どいつもこいつも無茶しやがってこの馬鹿」
「……」
呆れきった塚紗のため息混じりの呟きに、京次郎と朝吉は同時にばつの悪そうな顔で斜め上に視線をそらせる。そんな二人に、塚紗のため息は更に増えた。
「フフフ……。それにしても、御無事で何よりですわ。本当に、あの時はどうなる事かと……」
優しげに微笑む十六夜に朝吉は頬を赤らめさせ俯く。
そんな様子に、塚紗が何を思ったか突然立ち上がった。
「京次郎、夜吉。ちょっと来い」
「は?」
「え、何でっすか?」
意味が分かっていない二人だったが、塚紗の視線に大人しく席を外す。
その場には、寝台に半身を起こしている朝吉と十六夜だけが残った。
「えっと……十六夜さん……?」
「……貴方だったのですね、恋文の差出人……」
「……!」
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