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「「恋文の差出人が朝吉っ!?」」
病院の中庭につれてこられた京次郎と夜吉は二人同時に声をあげた。塚紗は事の真相を話し出す。
「あぁ、始めは知らなかったんだが……あの時恋文を読んだ時に気づいた」
「ちょ……どういう事だよそれ……」
驚いている二人に少し頬を赤らめた塚紗は頬を掻きながら続きを話す。
「あいつ、オレに相談して来たんだよ、あの恋文を出す前に……」
――塚紗さんっお願いっす! これの感想言ってください!
――は、はぁー?
「あん時は突然何だと思ったぜ……」
「……だからあの時手出すなって言ったのか……朝吉に犯人を捕まえさせる為に……。え、ちょ、まさかあいつがあの文章を!?」
嘘だろ!? 京次郎は、あの他人から見たらこそばゆい文章を思いだし問う。しかし塚紗の返答はあっさりしていた。
「いや、あれはオレが手直しした。流石に恋文として出すにゃ乱筆乱文すぎたからな」
「て、手直し……?」
さらりと言ってのける塚紗に京次郎は復唱する。
「あぁ、若い女が言われて嬉しいだろうなって感じのにな」
「!」
塚紗の言葉に反応した京次郎は顔を赤らめ慌てて口を開いた。が、
「おまえが頭から離れ――」
「オレは喜ばねぇぞ」
チーン。とどこからか響いた。
「まぁ手直ししたっつっても、あいつの言いたいことはそのまんまだからな。後はお前次第だぞ……」
塚紗は朝吉の病室の窓を見つめ小さく呟いた。
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