第七和:見えるものと見えぬもの

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「まさか本当につき合う事になるとはなぁ……」  お馴染み木戸邸の居間にて、仲良く並んで座る朝吉と十六夜を見て京次郎が呟いた。 居間には先日の朝と同じメンツが揃っている。 「でも良いのかよ、こいつん家めっちゃビンボーだぜ? 婿養子なら兎も角そうじゃねぇんだろ?」 「……京次郎様は気が早すぎます……。でも、私は末娘ですので例え勘当されても、朝吉様について行きますわ」 「……だってよ」  ニヤニヤ笑いながら京次郎は、顔を真っ赤に染めている朝吉を見た。京次郎の頭から動物の耳が出ているのは気のせいだろう。 「ま、良かったじゃねーか。こんな奇跡普通じゃあり得ないぜ?」 「これも、塚紗さんのお陰っすよ。塚紗さんの気遣いが無かったら、俺は今頃廃人でした」  朝吉の言いように全員が吹き出し笑い声があたりを包む。 「しっかし、これから大変だな。しっかり仕事して金貯めて、ちゃんと養っていける環境を造っていかなきゃだもんな」 「はい、今探してるところっす」  やる気満々の朝吉に塚紗は小さく微笑んだ。 「それじゃ、俺はまた仕事探しの続きしてくるんで失礼します。十六夜さんは休んでて良いっすよ」 「いぇ、私も手伝いますわ。私の為に頑張ってくださっているのに、私だけゆっくりなんてしていられません」  既に鴛鴦夫婦な二人。京次郎は少し拗ねたように腕を組む。 「へぃへぃ、鴛鴦夫婦はさっさと共同作業してこい」  京次郎の言葉に二人の顔は真っ赤。周りはその様子に笑っていたが、京次郎はちらりと塚紗を見た。 (俺だって……)  隣で楽しげに笑う塚紗に京次郎はただ小さくため息を一つついた。 .
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