第八和:心の強さと情[ココロ]の弱さ

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 塾に着いた塚紗たちは門を潜るとやけに中が静かな事に首を傾げる。 勉強中であったとしても、先生の声すら聞こえないのは明らかにおかしい。 「何か有ったのでしょうか」 「休みとか?」 「いや、今日は普段と変わらないはずだから、休みって事は……ん?」  三人でそう首を傾げていると、奥の方からなにやら聞こえてきた。 遠くてうまくは聞き取れないが人がいるのは確かなようだ。 「確かあっちは道場だったような……」 「とりあえず行ってみるか」  塾の地理を思い出すように呟いた京次郎に塚紗はそう促すと足を進める。京次郎と蒼は黙って塚紗を追った。 「ここ、だよな」 「ここだな」 「ここですね」  塚紗たちの目の前にはごく普通の道場が建っていた。 中から、おー! すげー! 等の声援のようなものや、うをりゃぁあ! やぁあ! 等のかけ声、そして竹刀の音がごちゃ混ぜに響きあっている。 「剣術の練習か?」 「それにしては声援が多いような……」  そう話しながら中に入ることを躊躇していた時。 ――がたっ。 「ん? あぁ、何か話し声が聞こえると思ったら君は木戸殿の……」  道場の戸が開き先生らしき男性が出てきた。 「あ、どうも……」 「今日は木戸殿は来ていないようだね、どうしたんだい?」  ぺこりとお辞儀する京次郎にその男性は近づき、ちらりと塚紗と蒼を見やる。二人も京次郎のようにお辞儀すると男性もニコリと笑うと再び頭を下げた。 「いや、ここに悠助がいるって聞いて、様子見に来たんです」 「悠助君? ああ、彼は木戸殿の所の子だったのか」  どうやら悠助の事を知っているらしく、やはり何度も足を運んでいるようだ。 「彼は今ある子と剣術の試合をしているよ、よければ見ていくと良い」  三人はその言葉に甘える事にし、男性と共に道場の中へと入っていた。 .
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