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道場に入ると騒がしさは一層増し、思わず耳を塞ぎたくなるほどだった。
「うわ、スゲーなこりゃ……」
生徒の多さと熱狂的な歓声に圧倒された塚紗たちは思わず一歩後ずさる。
「ん? あれ、悠助じゃねぇか?」
圧倒されながらも、その中心にいる人物に気づいた塚紗が指を指した。
あ、本当だ。と、京次郎と蒼も気づきそちらを向く。
そこには、ここの生徒とおぼしき子供と竹刀を交える悠助が居たが、お互い防具は一切付けておらず練習着のみの姿だった。
「ちょっと遠くて相手の顔がよく見えないな……」
一生懸命に目を凝らし京次郎が呟く。
「男子にしては……少し華奢に見えますが……」
蒼もそう呟くが、塚紗はただその試合を見つめていた。
そんな時、悠助の竹刀を相手が弾き決着が付く。衝撃で尻餅をついた悠助から微かに悲鳴が聞こえたが、それは周りの歓声にかき消されてしまった。
「……強いな」
「は?」
「……いや、何でもない」
塚紗の突然の呟きに呆ける京次郎。
しかし塚紗はそんな京次郎と蒼を置いて、ごった返す生徒たちの合間を縫って悠助の下へと進む。
「あ、待てって!」
そしてその後を京次郎と蒼が追った。
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