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しばらく竹刀を交えていた悠助だったが、ついにその竹刀は弾かれてしまった。その瞬間に、観客から喝采の声があがる。
「いってぇー……!」
竹刀を弾かれた衝撃で尻餅をついた悠助は、小さく悲鳴を上げると軽く痺れている両手をさすった。
「私に勝とうなんて百万年早いのよヘボチン」
未だ尻餅を付いている悠助に、相手の生徒が近づきながら言う。
「女のくせにぃ……!」
悪態をついた悠助。そう、悠助の相手をしていたのは女子生徒だったのだ。
「あんたこそ、男のくせに女に一度も勝てないじゃない」
「うっせ! いつか絶対負かせてやるからな!」
やれるもんならやってみな。女子生徒は見下したように言うと、先生のかけ声で少しずつ散っていく観客をかき分けてこちらに近づいてくる人物に気が付いた。
「よう、悠助。こっぴどくやられたな」
「げっ……塚紗何で!?」
軽い調子で片手を上げる塚紗に、悠助は慌て始める。それもそのはず、先ほどの負け試合を身内に見られてしまったのだ、恥ずかしい事この上ないだろう。
「まぁ、ちょっと気が向いてな。京次郎と蒼もいる」
蒼の名が出た瞬間悠助がもの凄く嫌な顔をしていたが、塚紗は敢えて何も言わなかった。
「ねぇ、アナタ何者なの、突然出てきて」
不機嫌そうな声に、塚紗はそちらへ振り向く。すると声色から察せられた通り不機嫌そうな表情で、先ほど悠助と試合をしていた少女がこちらを睨み付けていた。
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