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渚が道場を走り去り、その場に沈黙が流れた。
「おい塚紗、何もあそこまでしなくても良いじゃねぇか……」
竹刀を持ち渚の消えた方を見つめていた塚紗に京次郎が声をかける。
「あ? あぁ……いや、なんか自分でもなんか軽く舞い上がってたみてぇ……」
「はぁ……?」
眉を潜め頭をかきながら言う塚紗に、京次郎は首を傾げた。
「いや……女だてらに剣術やってたし、筋が良かったからな……なんつーか……嬉しくなったって言うの?」
はぁ……。頭からはてなマークを出しながら京次郎は塚紗の言い分を聞いていた。
「塚紗様」
「あぁ?」
蒼に呼ばれ塚紗はそちらを向く。
すると蒼は横に視線を送り、塚紗もそれに合わせた。するとそこにはしょんぼりとただ俯いている悠助がいた。
「あ、あのさ、悠助。悪かったな、調子乗りすぎた」
「え……あ、塚紗が悪いんじゃねぇって。あいつすんごい意地っ張りだからさ」
ちょっと様子見てくるから! そう言い残した悠助は渚が走り去ったように駆けだして行き、塚紗は複雑そうに頬を掻く。
「もしかして悠助ってすんごい成長した?」
半口開けて言った塚紗の言葉に、京次郎も同じく半口開けて頷いた。
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