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「よぉ、そこまでだぜ餓鬼共」
この集団を束ねているのがこの男なのか、やはり始めに町中で渚に絡んできた男が前に出てそう口にした。
「ったく、やってくれるじゃねぇかクソ餓鬼。見張りの何人かノしたみてぇだが、調子に乗んのもそこまでだぜ」
渚を庇うように前に出た悠助はキッと男を睨み付ける。
「おいおい、ヤル気なのか? この人数を前にして随分気が強いこったなぁ……だが」
男が右手を上げる。
すると回りの男たちは悠助たちを取り囲むように動く。
「観念しろや」
「観念するのはテメェ等の方だぜ」
ニヤリと笑む男。
がしかし、突如頭上から降ってきた声に、その場にいた全員が動きを止める。
そして声と共に、悠助達と男達との間に軽々とした身のこなしで誰かが降り立った。
その人物とは、
「塚紗!」
男たちの標的である塚紗本人だった。
「て、てめぇっ……!」
「こいつ等が世話になったな。この例はきっちり返させてもらう」
普段と変わらぬ表情を浮かべた塚紗はそう言うと悠助を見る。
「塚紗……お、俺……!」
「よく頑張ったな二人とも」
「「……!」」
ふわりと笑む塚紗。
悠助と渚は息を飲む。
「後はオレに任せて、しばらく中に隠れてろ」
「! 嫌だ、俺も……!」
戦う。そう出るはずだった悠助の言葉は塚紗の言葉によって遮られる。
「大丈夫だから、渚を守れ」
「っ……」
それから塚紗は悠助の背を渚共々押し地下牢への戸を閉めた。
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