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戸を閉めた塚紗は静かに手を添え男たちに背を向けたまま立っていた。
「涙の別れはすんだかぁ?」
標的が現れたのだ、何ら慌てる風もなく男は塚紗に声を掛ける。
「……テメェ等は、山賊か?」
おもむろに問われた問い。
男は意図が解らず小さく首を傾げた。
「あぁ? そう文に書いてあったろ?」
「……そうか、それなら」
そこまで言った塚紗は、顔だけ男達の方に向けた。その時の目は先程とは打って変わり正に――……
「覚悟、出来てんだろうな」
……――修羅だった。
――私と悠助は原菜塚紗によって地下牢へと押し込まれた。それから少しして聞こえだした悲鳴や肉が斬られる音。悠助が横で必死に耳を塞いでいる中、私はただ扉の向こうから聞こえてくるそれを呆然と聞いていた。
そしてそれが聞こえなくなくなって――……。
――ぎぃ……
ゆっくりと開かれた扉の向こうで、沢山の反り血を浴びた原菜塚紗が、とても悲しげに微笑んでいた。
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