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(……赤髪に巨大な大刀、女みたいに長い睫毛……顔に、傷……)
男の言葉を復唱する塚紗。そして思い出したように、あ。と口を開いた。
「そうだ京次郎、包帯かなんかねぇか」
「? どっか痛めたのか?」
いや、別に。と茶を濁したように答える塚紗に京次郎は、ふぅん、ちょっと待ってよー。と立ち上がり引き出しを探す。が、
「あー……そうだ、こないだ切らしちまったんだ……買ってくるか?」
使いきっていた事を思いだし手を止め、塚紗に向きなおした。
「ん、いや、なら良いや。ありがとな」
「? おう」
京次郎は引き出しを戻すと元の位置へと戻り塚紗は再びお茶を啜った。
丁度その時、玄関の方が突然騒がしくなり始めた。
『お、おい待てって……!』
『煩いヘボチン!』
微かに聞こえた覚えのある声に塚紗は眉を潜める。
(あれは悠助に………渚?)
居間へと近づいてくる足音に、何だ? と思いつつ塚紗はお茶を再度啜る。そしてそれを飲み込もうとしたその時、
――すぱーん!
「お姉様!」
「ぶっ……! げほっごほっ……!」
渚の登場、そしてまさかの台詞に、塚紗は飲み込もうとしていたお茶全てを吹き出した。
「……おい」
当然の如く、それは全て真正面にいた京次郎へと降り注がれる。が、塚紗はそんなこと知ったこっちゃなく、現れた渚を凝視していた。
「ずっと塾に来てくれるの待ってたのに! 何で来てくれないのよお姉様!」
正しくポカンという効果音の似合った顔を渚に向ける塚紗。渚は渚でそんなことお構い無しに口をへの字に曲げている。
「……渚、いきなりそれはいくら塚紗でも驚くって……」
渚の後に続いていた悠助が呆れ気味に呟いた。
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