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雨の降る暗がりの中、辺り一面人だったものが転がり、その中に一人立ち尽くしている影があった。
そして、何処からか悲痛な叫びが響き渡る。
――……でだ!
――なんで……
――何でお頭をっ……!
「っ……!」
真夜中、布団から飛び起きた塚紗は息を切らせながら自分の額から流れる汗を拭った。
「……“紅”……」
ポツリと呟かれた名。塚紗は一度目を閉じると再び開き部屋の隅に視線を向ける。
「こんな夜更けになんだ」
そう口に出すと、上から音もなく視線の先に式が現れた。
その手には小さな紙が握られている。
「また斎藤か……」
小さく頷いた式は、そのまま暗闇へと溶け込むように姿を消した。
そして部屋には紙を開く音だけが響く。
「……?」
そこにはただ、
――即刻来られたし。 斎――
という文章と、簡単な地図が書かれていた。
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