760人が本棚に入れています
本棚に追加
そう発した斉藤の顔は真剣そのもの。
塚紗は“アイツ”という言葉に目を見開いた。
「まさか……」
信じられないと言ったように斉藤を見つめる塚紗。しかし斉藤は確信したようにしっかりと頷き、塚紗は慌てて駆け出した。
夜、月明かりに照らされた縁側で桂は一人、空を見つめながら涼んでいた。
その光景を一つの影が見下ろしていた。影の主はニヤリと口元を上げると、背負っていた巨大な大刀の柄に手を添えた。
「……ん?」
何かの気配に気づいた桂が立ち上がりそちらに視線を向ける。そしてそれがなんたるかを理解して目を見開いた瞬間、
――ざしゅっ……
桂の肩から血が吹き出した。
桂の背後にはいつの間にか血の滴る大剣を握っている男が膝を立てていた。
「……きっ君は……!」
そこまで言った桂は、続きを言う前に意識を手放しその場に倒れる。
その時には既に男の姿はなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!