第八和:心の強さと情[ココロ]の弱さ

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 塚紗が急いで木戸邸に戻った時、門前に人影があった。 「京次郎……!?」  門前で小さく屈んでいる京次郎の姿に、まさか……。と、塚紗はさらに足を早める。  そんな塚紗に気がついた京次郎がゆっくりと立ち上がった。 「あ、お帰り」 「何か、あったのか……!?」  焦りから流れた汗を塚紗は手の甲で拭きながら京次郎に問う。 しかし京次郎は、何のことか、と首を傾げただけだった。 そんな京次郎の反応に、塚紗は安堵と落胆が入り交じったため息を一つつき苦笑した。 (……そうだよな。斎藤は“向かってる”としか言っていないじゃねーか) 「……ったく。じゃぁなんでこんなところでしゃがみ込んでたんだよ?」  その問いに、京次郎はギクリと肩を震わせ、顔は仄かに赤みを帯びていく。 「いや、べっ別に意味はねぇけど……」  斜めに空を見つめ言う京次郎。 塚紗は、まっ良いけど。と首を傾げた。 「ところで、桂は?」 「あぁ、親父なら自室に籠もってたけど、さっき庭で涼んでたぜ」  そうか。そう呟いた瞬間、塚紗の表情が一変し辺りを見回す。 「塚紗?」 「血の、臭いだ……。まさかっ」  何かに気づいたように呟いた塚紗は急ぎ木戸邸の門を潜った。 「お、おい塚紗!?」  京次郎も慌てて塚紗を追う。 塚紗は真っ直ぐに桂の居るであろう庭へと向かった。 そして角を曲がったその時、塚紗の足が止まる。 「お、おい塚紗どうしたんだよ、血の臭いって……――!?」  追いついた京次郎も塚紗がある一点を見つめたまま固まっている事に気づきそちらを見る。そしてその目に写ったのは、 「っ……親父!!」  庭で血だらけになって倒れている桂の姿だった。 ――第八話終幕。
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