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翌朝。
「うん、心配かけたね、みんな」
居間には桂の何時もの姿があった。
「いや、何普通な顔してんだよ馬鹿親父! まだ寝てろ!」
「京君酷いっ……! 馬鹿親父だなんてっ……!」
目をウルウルさせるオッサンに京次郎は、休む口実が出来たって軽口叩いてたのは何処のどいつだ、とため息をついた。
「でもやっぱまだ寝ててよ……俺、朝聞いて吃驚したんだぜ?」
心配げに言う悠助に桂は、すまなかったね、と苦笑を向け、
「うーん、どうも体が休み方を忘れてしまったみたいでね、ここが疼くんだよ」
「親父……」
桂の言葉に眉を下げる京次郎。そして、
「そこ、傷口……」
「あれ?」
笑みを浮かべる桂であったが、肩口から血がドクドクと流れ、もう一度あれー? と呟きながらフラリと倒れ込んでしまう。
「親父ぃぃぃいいい!」
「おっちゃん!?」
京次郎と悠助の声が屋敷中に響き渡り、塚紗は静かにため息をついた。
「ったく……悪ふざけも大概にしろってんだクソ親父」
「ははは……」
数刻後、自室には京次郎に布団の上で大人しく包帯を巻かれている桂とそれを黙って見つめる塚紗の姿があった。
時々ぎゅっとキツく巻き、いたたたっ、と悲鳴を上げている。しかし、ふと何かに気づいたように桂は庭を見た。
「おや、どうやらお客のようだね」
「……っ!」
桂の言葉に、塚紗と京次郎は直ぐ様庭を見る。そこには赤毛の男が立っていた。男の顔には右の頬から横に、左の耳の下辺りまで一文字に大きな傷がある。
「お前は……!」
「俺からの挨拶は気に入ってくれたか?」
肩に巨大な太刀を担いだその男はニヤリと口元を上げると、
「よお。久しぶりだな、塚紗」
そう口にした。
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