幕開け

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嘘だ これはきっと 悪い夢 そんなの 信じない 瑠璃はその場に立ち尽くす 「皆でお葬式に行きます バスに乗ってください」 顧問が静かに告げる 「瑠璃…行こう」 遥がそっと声をかける 瑠璃はフラフラと歩きだす 「瑠璃…大丈夫か?」 優輝が瑠璃を支える 「……嘘だ」 独り言のように呟く 「行って この目で確かめるまで 認めない …早く…行こう」 その声は震えていたが はっきりと言った 瑠璃の言葉を聞いてからは 誰も喋らなかった 瑠璃にかける言葉が 見つからなかったからだ バスで移動中も 誰も喋らなかった 湊はただ黙って 瑠璃の背中を 宥めるように撫でている 泣いてはいなかった しかし 余りにも瑠璃の背中が 寂しそうだったから .
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