第Ⅰ章 プロローグ

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…………。 だが、なかなか寝付けない。 人間、一度目を覚ましてしまうと 寝付けないものである。 さっきまでみていた夢のせいだ。 なんで思い出すことの できない夢を見てしまったのか。 見なければ寝ていられたのに。   そう自分にたらたら文句をいうが そんなもん 無意味ということには変わらない。 仕方がなくまた体を起こす。 髪の毛をぼりぼり掻きながら 暗闇の中を凝視する。 ――月は、今もあるのかな? ふと、なぜか月があるのか と言う訳も分からない理由で 月を見たい衝動に駆られた。 ベッドから這い出ると 窓際へ移動する。 そして、俺はカーテンを開けた。   そこには 綺麗な星が光っていた。 この漆黒の空を星の輝きで 明るく世界を照らし出していた。   だが、その中に月はなかった。 まだ出ていていいはずの 月はなかった。   なぜだろう……。 なぜ俺は月などを みたがったのか それもわからない。   サッ、とカーテンを閉めなおすと 再び布団にもぐりこむ。 なかなか寝付けないのには 変わりは無いがそれもやがて 布団のぬくもりに当てられて また暗闇の中へと 落ちていった――。
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