再会

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雪国越後。 春まだ遠い,ある月の初旬。 春を求めるならば,ここへは訪れない。 奇特な人間もいるものだなと,自分を笑う。 けれど貴方に会いに,幾度となく足を運んだこの地。 今年もまだ雪の残るこの場所は,貴方とゆっくり語るには,人も少なくて丁度いい。 「私はいつまでこうして,この生き方を続けていくのでしょうね」 空へ投げた問いに,風が答える。 『”永遠に”だろう?』 直江は穏やかに微笑んだ。 (貴方なら,そう答えるだろう) 「私がここへ来ることを,非難する人はいません。誰も私に”馬鹿だ”とは言わない。言われても,きっと意地になって続けることくらい,皆わかっているのでしょう」 『だから馬鹿なんだろう?』 (そう,貴方は知っている) 雪をまとった桜の樹。 けれど幹に手を当てれば,確かに息づく暖かな樹。どこを訪れても,いつ訪れても,この樹は貴方を思わせる。 暖かで,力強い,母のような樹。 「先日,長秀に会いました。彼はもう,共に歩む人を見つけたようですね」 少し寂しそうに直江が笑うと,桜の枝からわずかに,雪の粉が滑り落ちた。 『……暖めてやれなくてごめんな』 直江は首を横に振って否定する。 「……私は病気ですね。きっと端から見たら」 ここで貴方と語っていても,それは単なる独り言でしかない。 貴方からの応えは,きっと幻想。 聞こえる言葉も,きっと幻聴。 貴方の姿が見えたなら,間違いなく……。 「それは幻覚よ」 心の言葉に,現実の声が続いて,直江は我に返った。 聞き慣れた,しかし久しぶりに聞いた声である。
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