:+ 挨拶 +:

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女子に対して弟を引き合いにするのはどうなのか。しかし空は至って真面目だ。取り敢えずこの動揺は別に色恋的な何かでは決してなく一時の気の迷いみたいな心臓の誤動作であって特に深い意味はない!!と、自分に言い聞かせる。 挙動不審な空に、旭が大丈夫かコイツ、的な目差しになったけれど彼は気づかない。 「……えーっと…。はい」 自分への言い訳及び自己暗示に奔走していた空は、不意に唇に何かが押しつけられたことで現実に引き戻された。驚く間もなく唇を割ってコロンとしたものが口内に入り込む。 「お腹減ってたから変な顔してたんでしょ?空にはまだあげてなかったし。すぐに支払いしてくるからご飯食べるまで何とか我慢してね」 そう言って旭は一通り視線を巡らすと、さっさと何組かを掴んで行ってしまった。 一人残された空は、唇に手をやって呆然とする。 「……甘い…」 それは飴に対してなのか、触れた柔らかで細い指に対してなのか。ただ頬に集中した熱が、無自覚な彼の心根を示していた。  
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