1687人が本棚に入れています
本棚に追加
/360ページ
**************
『一泊する用意しててね。明日の朝9時に迎えに行くから』
そう言われたのはつい2時間前の出来事。氷像のような透き通る美しさを振り撒いて、白夜はにっこりと笑った。
「ねぇ罠だと思う!?おかしいよね、何でわざわざスワヒリ語の勉強すんのに実家に帰るの!?寮でいいじゃん!」
熱弁する旭に、銘夜はやられた、と額を覆った。滅多に実家に帰らない白夜のことだし、まぁ勉強も寮でやるだろうと高を括っていたのがそもそもの間違いだったのだ。
「多分白夜だからあたしの正体だって勘づいてるはずなのよ!だったら何で宿敵をアジトに誘い込むのっ!!何、人質にする気!?悪いけどそう簡単に対策室は動かないんだからっ」
対策室は味方を裏切らない。しかし、味方の身柄と引き替えに要求を飲むこともしない。対策室がすることは、何とか味方を助けるために計画を練り人員を派遣するだけだ。
それまで人質となった人間は、自分でどうにか脱出するしかない。元より機密情報を吐くくらいなら自害するというのが彼らの持論だ。例に漏れず旭もその理念で生きている。
まぁ、旭がそんな状態になったら何振り構わず銘夜がブッ飛んで来そうだが。
最初のコメントを投稿しよう!