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◇ ◇ ◇
終業式の直前まで授業を受け、校長の有難い催眠波をくらったおれは、一人で今朝の道を逆戻りしていた。
なにも終業式の日まで授業をしなくてもいいのではないだろうか。
何はともあれ、放課後だ。
岸部は彼女と帰ると言っていた。
気さくで話しやすく、意外に気の回るためだと思うが、岸部は意外とモテる。
忌々し――いや、何でもない。
さて、次の角を左折すれば我が家だ。家が近いというのは、やはり便利だな。
家に着いたら何をしようか? おれの計画としては昼は遊び、夜はサクサク宿題を片付ける事になっている。
「よし、まずはやりかけのFF8を――」
おれは気付かなかった。
曲がり角に建った家の塀の死角、そこの地面に怪しげな模様があり、自分が思い切りその上に立っている事に。
視界がまばゆい光に染まり、体から力が抜けて行く。
これから始まるのは、おれの壮大な寄り道。
平凡なおれの非凡な夏休みは、ここから始まるのだ。
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