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私の目には、そこに人が座っているように見えたのだ。
はやる気持ちを押さえながら、しかし出来るだけ速足で近付いてみる。
「おはよう」
人がいた。少年だ。台座に座っている。彼は私に朝の挨拶をしたのだ。
「あ…、おはようございます…」
私は、ここで初めて自分の声というものを聞いた。
彼は私に笑みを投げ掛け、こう言った。
「今日はよく晴れてるね、リリィ」
「…リ…リィ?」
彼は、ふふ…と笑って説明した。
「『リリィ』は君の名前だよ」
「名前…」
彼は何者なのだ?見た目は、私と同じ年頃か、私よりも下かもしれないというところだ。
白い肌に白い顔。左目の下に小さな黒子がある。
笑顔がまだ可愛らしく見える年頃の少年だった。
しかしその少年の口にした言葉は『リリィ』。私の名前だという。
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