第4章:鼎梓

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待て…… 相原花音って誰だ?? 私……じゃないよな?? 「私は今私の目の前にいる花音ちゃんが好きなのー……」 沙希の目の前にいる“花音”?? 沙希の目の前には私しかいない そして私は相原花音だ ……本当に沙希は私のこと?? 「……なんで私なんだ??」 他にもっと魅力的なやつはいるだろ??という意味も込めて沙希に尋ねる だが沙希は首を傾げるだけだ 「人を好きになるのに理由は必要ー??」 「………私なんか無愛想でつまんないだろ??」 私はずっと沙希を含めた全員を無視し続けていた まともに話をしたのだって昨日が初めての筈だ 「そこがクールで可愛いんだよー」 クールで可愛いって…… クールと可愛いは一緒にあっていいのか?? 「なぁ沙希 私さ、告白とかされたの初めてではっきり言って戸惑ってるよ ……でも一つだけは言えるんだ すまん、私はお前の気持ちには応えられない」 私がそういうと沙希はニコッと笑ってから後ろを向く 「うん、その返事がくることは分かってたからー…… 花音ちゃんは栞ちゃん一筋だもんねー」 私は『あぁ』と頷いてから沙希を抱き締める 「無理に聞いてすまなかった」 「か…花音ちゃんー?? 何するのー??」 私は沙希の目元を指でこする ……案の定沙希の目元に湿った感覚がある 「泣くなよ」 「な……泣いてないー」 強がってはいるが明らかに声は震えている 私は沙希を抱き締める力を強くする 「よかったら、でいいんだけどさ…… これから時々相談にのってもらってもいいか??」 「……それが自分が振った相手に言う言葉ー??」 ……まぁ確かに降った相手に言う言葉ではないだろうよ でも私は気の利いたことを言えるようなやつではないからな 「ふふー…… あははははー 花音ちゃんらしいー」 「な……なんだよ 私らしいって……」 沙希は私の腕からすり抜けてこっちを向いた 涙の跡はあるものの笑顔だ 「もうふっきれたよー 私、全力で花音ちゃんの恋を応援してあげるー」 「ありがとう、沙希」 私にはそれしか言えなかった
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