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《ガタン、ガタン…ガタン、ガタン…》
「……」
その頃、俺は電車に乗ってある場所へと向かっていた。
平日の時間帯だけあって、人は全くいなくて俺は一番端の席に座り到着するまで外の景色を見つめていた。
「……」
景色を眺めていると、何だか真琴の声が聞こえて来るような気がした。
早く…早く…って。
「…わかってるよ…」
俺は外を見ながら小さく笑い、誰もいないのに独り言を呟いた。
「大丈夫…すぐ行くからさ…待っててくれよ…」
『〇〇ー、〇〇ー。
お降りのお客様は――…』
すると電車は目的地に到着し、俺はゆっくりと立ち上がって電車を出る。
駅にも人は疎らで、俺一人が改札を抜けた。
「着いたよ…真琴…」
《ザザァァーーン…》
俺がやって来たのは、夏に来た海。
真琴に告白した、あの海だった。
ここで、俺はまた真琴に告白する。
そして、真琴と同じ場所に行くんだ。
ずっと一緒にいるために…
真琴の側にいるために…。
「……」
俺はずっと握り締めていた携帯を開き、真琴に電話を掛けた。
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