桜吹雪

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 小さい頃から、桜の花が嫌いだった。  自分と同じ名前の花というだけで、気に入らなかった。  雨や風に弱くて、すぐに散ってしまう儚い花。  そんな弱さが嫌いだった。  ‡ † ‡ † ‡ 「あ゙ー、めんどくさ!」  私の隣で、幼なじみの大和【ヤマト】がぼやく。 「なんで俺らがワザワザ就任式と入学式にでるワケ?勝手にやってろってなぁ」  その意見には同感だったが、私はiPodから流れる音楽を聴くだけで、反応なんてしなかった。  春先のやや冷たい風が吹けば、学校へと続く桜並木の花が舞い落ちてくる。  私は花弁を振り払うように、長い髪をかきあげた。  大嫌いな桜。この高校に入学したおかげで、満開の桜並木を通るのも三年目。  今年卒業だけれども、全く未練も思い出もない。  ただ友達とくだらない話をして、学校帰りに寄り道して、授業中に居眠りしたり、たまに遅刻したりと、ありふれた日常生活が繰り返されていただけだ。  今日もまた、同じような事をしている。 「なぁ、サク。これって遅刻じゃね?サボらん?」 「やだ。また去年みたいに生活指導に怒られるもん」  大和は「あー」だの「うー」だの呻きながら、だらだらと私の半歩斜め後ろを歩いている。  だまって歩けないのか、この男。 「なぁ、サクラは卒業したらどうすんの?」 「さぁ?なるようにしかならないでしょ」  今年高校三年生でありながら、進路は全くの未定。ついでに大和も。  いや、大和は家の仕事を継ぐかもしれない。  そんな事を考えていると、桜並木の中に、私たち以外の人影を見つけた。  生徒にしても教師にしても、遅刻ギリギリの中でのんびりと桜を見上げている変な男だ。  少し背の高いシルエットの人物は、私たちに気付いたのか、横目に視線を投げた。
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